【植物3】 真っ白なゆりの花 ~おしょうさんの祈る力、改めて思い知る1~

今から3年前の2012年8月、精進料理の定番であるごま豆腐のオリジナルレシピが完成した。このごま豆腐の見どころは、白いお砂糖を一切使わず、その代わりにてんさい糖を使ったことである。

てんさい糖とは、砂糖大根(てん菜)を原料とし、天然のオリゴ糖が含まれている。オリゴ糖は、お腹のビフィズス菌を元気にして増やしてくれる強い味方だ。「S先生といつか一緒に精進料理を食べてみたいんです。」と、私はS先生にかつてそう言ったことがあった。

S先生とは、日蓮宗のご住職で、これまでずっと、私に本格的な祈りを教えてくださったお尚さんのことだ。事前にお寺にお電話を差し上げ、その日の夜、S先生にそのごま豆腐をお届けに上がることで話が決まった。

お寺に着くと、直ぐに客間に通された。そこで私は手作りのごま豆腐をお渡しすると、S先生は静かに喜ばれた。そこでしばらく何気ないお話をすると、「せっかくおいでになられたのですから、唱題を少しおやりになっていきませんか?」と、S先生がそうおっしゃった。「え? いいのですか?」と私は言い、内心かなり喜んだ。唱題とは、お題目を唱えるという意味である。

本堂に通されると、ご宝前の左と右に1つずつの花瓶が置いてあり、大振りの真っ白なゆりの花が、それぞれに5~6本ずつ生けてあった。ご宝前とは、鈴(りん)やお線香セットなどが置いてある場所のことである。そのゆりが凛としててすごくきれいだったので、私は吸い寄せられるようにそのお花に近づいた。

ところが、顔を近づけても全くゆりの香りがしなかったのだ。「造花かな~?」と思い、親指と人差し指でそっと花びらを挟んでみた。生花特有のしっとり感もなかったので、「変だな~」と思った。

(続く)

 カテゴリー : 植物 | 投稿日 : 2015年10月31日

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