【動物1】 教育の森公園の柴犬むさし ~戸惑うほどの切実な思い1~

教育の森公園で「むさし」という名前の柴犬に出会った。教育の森公園とは、筑波大学の東京キャンパス社会人大学院(夜間)がある場所の真向かいにある公園だ。東京都文京区にあり、営団地下鉄丸の内線の茗荷谷(みょうがだに)という駅が最も近い。

私はその公園をよく散歩したものだ。その公園とそのキャンパスの間に1本の舗装道路がある。ある日、私はそこを歩いていた。1人の女性がリードに繋がれた1匹の犬をその場に待たせた状態で、他の人と立ち話をしていた。私はその側を通りがかったのだ。

私はその犬に目がいった。その犬は舌を出して、ハァーハァ―と激しく息をしていた。飼い主さんは、つばの付いた日よけ用のほおかぶりをしていて、あっちを向いていたので、飼い主さんがあっちに向いてるなら、今のうちに触っちゃえ~・・・と思った。私はそっとしゃがみ込み、その犬に向かって口を開けて「あー」という顔をしてみた。声は一切出さなかった。「私はあなたのことがすごく好きなの!」という気持ちを込めた。その表情のまま、今度は目をパチクリと忙しく瞬きをしてみせた。あごが疲れてきたので、「あ」の次は「い」、「い」の次は「う」、「う」の次は・・・という具合に、あいうえおの順で表情を変えてみせた。すると、なんと、その犬が立ち上がって、私に向かって歩きはじめたのだ。「おっと、来たぞ!」と思った。噛みつかれるか、ペロリとなめられるかのどっちかだな、きっと・・・と、私はそう思った。

その犬が立ち上がって歩き出したので、リードの先端を握っていた女性の腕が引っ張られた。そのタイミングでその女性が振り返ったことに気づかず、私はいつまでもその女性の背後でその「あいうえお」をやっていたのだ。

視線を感じてそっちを見たら、その飼い主さんと目が合ってしまった。「あ、見られちゃったー・・・」と思った。左の人差し指で頭の横をポリポリと搔いた。私は自分の顔が「ポッ!」と熱くなったのが分かった。

私は立ち上がり、「本当に可愛らしい犬ですねー。なんて言う名前なんですか?」と、ゆっくりと優しく聞いてみた。すると、その女性は、むさしって言うんです・・・と教えてくれた。「え? むさしって、あのむさしのことですか?」と聞いたら、「え、そうよ!」と言っていた。むさしとは、あの宮本武蔵のことだ。随分カッコイイ名前だな~・・・と思った。その女性は、見た目65歳前後の女性だった。

(続く)

 カテゴリー : 動物 | 投稿日 : 2015年10月29日

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