【社会4】 巣鴨の筋金入り ~ひどいショック!~ 涙が止まらない2

巣鴨のとげぬき地蔵でお参りができて、塩・豆大福も買えて、そしてDVDの「スイート・ノーベンバー」も借りられた。たったこれだけのことだが、私はもう気持ちはホクホクだった。後はもう、このまま家に帰るだけだった。ここまではよかったのだが・・・。

この通りは人が多い。それでも私は気づいた、その通りの路肩で微動だにしない人の姿を。その人物を通り過ぎてから少しして、私は家族にこう聞いた、「今さっき、右側の道路端に人がいなかった?」と。すると家族は「いたー!」と言った。それで私はこう聞いた、「ちょっと見に行きたいんだけど、いい?」と。私はよくても、家族は疲れてるかもしれないし、お腹も空いてるかもしれない・・・と思ったからだ。

ゴーサインが出たので、もう一度その混む道を引き返してみた。なんと、そこにいたのは、フードつきの真っ赤なトレーナーを着たホームレスらしき男性で、彼は冷たい地べたで土下座をしていたのだ。微動だにしない。「ビシッ!」と土下座したっきり、本当に全く動かないのだ。すごい筋金入りだと思った。

その男性は、そのフードをすっぽりと被っていたので、顔は一切見えなかった。下はベージュ色の作業着のようなズボンをはいていた。足が悪いらしく、1本の杖を自分の頭上のところに、「ビシッ!」と横に置き、杖の両端が数センチのずれもなく、真っ直ぐに置いてあった。そして、その杖を超えたところに直径20センチぐらいの楕円形の籠が1個置いてあった。その籠さえ、「ビシッ!」と置いてあったのだ。「どうか、よろしくお願いします!」という切なる思いが伝わってきた。

その籠の中を覗いたら、日本の小銭がパラパラと入っていた。ザクザクではなく、パラパラだ。大して入っていなかったのだ。お札は1枚も入っていなかった。私はその光景に出くわした時、震えた。ただもう、ショックで震えてしまった。ジワジワと目元に熱がこもり、目からこぼれそうになった涙で、私の視界はぼやけてしまった。危なくて歩けない。人にこんな顔を見られたくない。私は慌てて、被っていた自分の帽子で、顔を隠した。足の力が抜ける寸前で、その辺に座り込みたいほどだった。私の背後では、名物のたい焼きを食べたくて、そのお店の前に長蛇の列ができていた。どこのお店も大繁盛だった。

(続く)

 カテゴリー : 社会 | 投稿日 : 2015年11月5日

【広 告 (Advertisements)】