【出版物26】 座禅・気持ち冷めた時 ~凛々しい青い目の僧侶~ ネルケ無方さん3

ネルケ無方さんは、高校を卒業と同時に日本に行くことを決意されたのだが、そこに「待った!」をかけた人物がいた。その人物とは、学校を辞めてしまった座禅サークルの、あの元顧問の先生だった。

一気に燃え上がった気持ちで、それこそ「それ行けぇーーー!」というような思いで、日本に行って禅僧を目指しても、やがてその気持ちは冷める時が来るだろう・・・とそんなようなことをその先生がネルケ無方さんにおっしゃったそうだ。

自分がイメージしていた世界とは違っていた・・・なんてことはよくある話だ。座禅だけをやっていれば、それでいいってもんでもない。そもそも和とは日本を表し、人との調和を意味する。日本における和とは、一体何なのか・・・。こういったことも、現地に行って、それこそ実際にそういった人間関係の中に、自分の身を置いて初めて分かることだ。元顧問の先生は、そんなことも考えておられたのかもしれない。

そして、その先生はこうもおっしゃったそうだ。3年、5年で、挫折するかもしれない。でも、自分が一度これだと思って選んだ道なのだから、仕方なく歩み続けても意味がない。いつでも帰国できるように、それこそちゃんとした職に就けるように、まずは資格を手に入れなさい。それができないのなら、禅寺は、君にとってただの逃げ場にすぎない。まずは、大学に進学して、日本語でも勉強して、それから禅修行に励みなさいと、ここまでおっしゃったそうだ。ネルケ無方さんは、この時、悶々とされただろうと思う。ネルケ無方さんは、だまされたつもりで、渋々ベルリン自由大学(国立)へと進学され、1990年には、念願だった日本での1年間の留学も果たし、その後(ベルリン自由大学の)修士課程も終えている。

これだけの年月をかけても、ネルケ無方さんの禅僧への思いはとどまる事はなかった。すごい熱意だと思ったし、ネルケ無方さんは本気なんだと、私はそうも思った。そして、ネルケ無方さんは、本格的に日本にやって来たのである。

(続く)

 カテゴリー : 出版物 | 投稿日 : 2015年12月26日

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