【社会5】 生き抜いて ~ひどいショック!~ 涙が止まらない3

その日、どこのお店も大繁盛しているその巣鴨地蔵通りで、私はこう思った「敗戦後の日本じゃあるまいし・・・。みんながこんなにも豊かに暮らしてるのに、なぜあなただけが・・・」と。「今日は縁日だよ。お腹、空いてない?」「縁日で人が集まるから、だから無理してその足でここへ来たの?」「そんな冷たいところで、いつまでもそんなことをしていたら、身体にさわるよ。」などと、思いが次々と湧き上がってきた。

「もう、ダメ! もー、ダメ!」と思い、しょっていたリュックのポケットからお財布を取り出し、小銭をワシづかみにしようとした。だが、既に手も震えていたので、ワシではなく、ハトづかみになってしまった。これじゃダメだと思い、自分の手の平をくぼませて、その上にジャラジャラと小銭をあけ、しっかり握りしめると、私はその男性の頭上に置いてあった籠を目がけ、フラフラする足取りで近づいた。

握りしめた小銭をその籠の中にそっと入れたが、「チャリン!」と音がしてしまった。その音に反応して、その男性は「ギクッ!」と、微かに動いた。自分の籠の中にお金が入ったことが分かったんだと思う。その男性は土下座のまま、身体を何度か静かに揺らしていた。「ありがとうございます!」という意味だったと思う。

私はその後2日、3日、その時のショックが身体に出てしまった。スイート・ノーベンバー(DVD)どころではなかった。何を食べても美味しくなかったのだ。何があっても生き抜いてほしい。その時の気持ちは今も変わらない。

(完)

 カテゴリー : 社会 | 投稿日 : 2015年11月5日

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