先週のある晩(2018年1月16日 )、私は右手を下にして寝ていた。そこへ、私の後頭部から「ニャーニャー」と、猫の鳴き声が聞こえた。私の耳元数センチ手前で鳴いているようにも聞こえた。「あ、(私の)お布団に入りたいんだ・・・」と思った私は、寝ぼけ眼で自分の掛布団をめくった。
次の瞬間、私は顔をモップでこすられた。誰かか私の顔をモップでこすったと思ったのだ。一瞬の出来事だった。その時、私は寝ぼけていたので、何が起こったのか、全く事を把握できないでいた。完全に相手にやられっぱなし。
モップで私の顔をこすった犯人は、なんとその猫だった。猫が私の後頭部から私の顔をまたぎ、猫の、あのフカフカのお腹で、私の顔をこすったのだ。
その直後に、その猫が私のお布団の中にモソモソと入ってきた。それで、「あれ? 今の(モップの犯人)は、猫?」と、私はようやく気づいた。
猫はまっしぐら。自分のお腹で人間の顔をこすろうが、こすらまいが、そんなことお構いなし。今となっては、可愛く思えて笑える。
寝ぼけてる時にそれをやられると、猫の鳴き声とモップが分離していて、それらをつなげて考えることがなかなか出来ない。
私はてっきり、私の後頭部からぐるっと迂回して、それで私のお布団の中に入って来ると思った。でも、実際はそうじゃなかった。そこが動物。
私のお布団の中に入ると、私に「ピッタリ!」と自分の身体をくっつけてきた。それこそ私にべったりとくっついて寝るのだ(カワイイよぉー!)。
ちなみあの眠れる予言者エドガー・ケイシーさん(1877年3月18日 – 1945年1月3日)は、父方のお爺さんの事が大好きで、夜寝る時は、そのお爺さんの長いひげにつかまって寝ていたそうだ。綱引きの様にひげを束ねて引っ張る態勢をとるのではなく、10本の指を全部広げて、その指をお爺さんのひげに引っかけて寝ていたそうだ。綿あめのようなモコモコとした長いひげだから、指が絡んじゃって絡んじゃって、1本ずつ引き離すのが大変だったという。「相手のことがすごく好き!」というその気持ち、なんかわかる気がした。
ただ寒かったから・・・と猫はそう言うかもしれないが、でも猫が私を頼り、当てにしてくれたことは、なんかやはりうれしい。うちの猫は、人間がすごく好きな猫なのだ。
以前住んでいたところでは、夜になると、必ずやってくる野良猫がいた。三毛猫で、雄か雌かはよくわからなった。野良の割には、非常に毛並みがよく、筋肉もしっかりしていた。飼い猫のようにも見えたが、首輪はしていなかった。
家のすぐ近くに来て、「ニャーニャー」と鳴くのだ。それで、「あ、来た!」とわかる。その三毛は、お魚がすごく好きだった(ちなみにうちの猫は、お魚よりチキンの方が好き)。お友達になりたくて、側に行くと、直ぐ逃げてしまう。毎日のように来るので、毎日のようにお魚を用意していた。
どんなに餌をあげても、絶対身体をナデナデさせてくれなかった。ちょっとでも「おいで、おいで」をしたり、自分に注意を向けられると、直ぐに逃げ出してしまう猫だった。諦めて、家に戻ると、その後を追って、再びこっそりとやってくる。そういう猫だった。
繰り返しお魚をあげるようになったら、投げ与えなくても、人間の手から直接食べるようになった。それが、鋭い爪で引っかくのだ。お陰でエサを与えるたびに、手は血だらけになった。結局、最後の最後まで、その三毛を手なずけることは出来なかった。
その時の事を思うと、今のうちの猫は、非常に人間に懐いている。
・・・といっても、今の猫は、最初のうちは、触らせてくれなかった。抱っこも嫌がる。ましてや一緒のお布団で、人間と一緒に寝る・・・などという事もなかった。
猫だから、自由に外で遊ばせてあげたいが、それが、外に出たがらない。木登りもしたいだろうし、通りすがりの猫たちともじゃれ合ったりしたいだろうし・・・と思った。
いつだったか・・・、お天気のいい日に猫を外に出したことがあった。それが、玄関でうずくまってしまい、その場でずーっと鳴ているのだ。外の音が怖かったのか、あるいは捨てられた・・・と思ったのか・・・。異様な鳴き声になってしまった。
「おかしいなぁー・・・」と思った私は、インターネットで調べてみた。すると、そう思うのは人間だけで、外にいると、猫は緊張感や不安感があるのだという。年中外でフラフラしている猫は、寿命が短いらしく、せいぜい3~4年と、そう書いているサイトもあった。「そうなんだぁー」と、私はそう思った。
今住んでいる家の敷地内のちょっとした通路で、次々に色んな猫が現れる。そのうちの1匹にナデナデしたら、じゃれついてきて、いい感じの猫がいた。その猫がいきなり立ち上がった。どこに行くんだろう・・・と思って、私はある時その猫を尾行したことがあった。
すると、その猫が辿り着いたのは、近くの公園の砂場だった。砂場で、なにやらクンクンと匂いをかいでいた。そして場所を定めると、そこがその猫のおトイレだった。
その後のその猫の行動に驚いた。なんと泥が混じった茶色い水たまりに顔を近づけたのだ。「まさか・・・」と私は思った。なんとその猫は「ピチャピチャ」と音をたてて、それを飲んでしまったのだ。雨上がりの水たまりで、しかも泥まみれの茶色よ。
その時の事を思うと、外にいる猫があまり長く生きられない・・・というのもうなづける。
暦の上では、もうすぐ春。別れの季節であり、新たな出会いの季節でもある。この時期は、温かくて、脳や身体にもストレスがかかりにくいので、恋をしたくなる季節みたい。ゆっくりと芽生えて、静かに心に灯がともる。
失いかけた恋、音信不通になった友人など、森の木が一斉に芽吹くように、もう一度はじめからやり直してみるのもいいかもしれない。そう、もう春だから。
(完)